ホストの世界を舞台にし、若手のイケメン俳優を集めた舞台は他にも例がないわけではない。それにしても、平日の昼間の公演でありながら、実によく入っている。約1300席の日本青年館の大ホールでの13回の公演がほとんど完売に近い状況であり、演劇不況の折、羨ましいと思う劇場や劇団は多いだろう。
主演にミュージシャン・俳優の松岡充を据え、余命がわずかと判断された難病を治すために、博多の中洲へ来てホストを始める、といういささか乱暴なストーリーで幕が上がるが、これが後の話へ続く伏線となる。
荒木宏文、五十嵐麻朝、平田裕一郎、廣瀬智紀らの若いイケメン俳優たちを「一軍」「二軍」と分け、開演前から休憩までの間に観客が人気投票を行い、一軍へ上がれるチャンスを作る、という「観客参加型」であり、開演前にもキャストが通路を歩いている。
後者はさして珍しい光景でもないが、何とかして観客参加の形態を増やそうという試み、それにより舞台と客席の距離感を縮めようという努力のあとは窺える。一幕が100分、20分の休憩を挟んで二幕が80分、合計で3時間20分はいささか長いが、話の運びのテンポが早いので、そう飽きることもない。
はっきり言えば、松岡充以外には集客力を持った役者がいるとは思えない。それぞれ、テレビや映画、他の舞台では活動をしていても、「看板」として舞台を引っ張るだけの力という点で観れば、そこまでは行かないメンバーが多いのは事実だ。しかし、現実に観客は喜び、この時間を楽しんでいる。これを、「安直だ」「観客のレベルが落ちた」と断罪することはいとも簡単だ。
その一方で、「どういう満足なら良いのか」という物差しは観客それぞれだ。東京だけで10,000人以上の観客を、いとも簡単に、とは言わないまでも集めることができるのは、テレビドラマから始まって舞台化、今回の二回目の舞台化、という流れが、今の観客に対する「見せ方」の一つの方法として成立しているのは事実の証明でもある。
これはこの作品に始まったことではなく、NHKの大河ドラマは言うに及ばず、民放各局のドラマを元にずいぶん行われて来たことだ。しかし、その公演すべてが成功しているわけではない。
今度の舞台に関して言えば、演技の巧拙、という点で言えば、「まだまだ」と言える人々が多い。しかし、その代わりに、「何とかして観客に楽しんでもらおう」という熱気が溢れ、個々人がエンジン全開のレベルで、全力でぶつかっていたことも事実だ。生の舞台でさえ、最近は手抜きが観客にわかるようなレベルのものが平気で公演されていることを考えると、この一所懸命さは評価できる。本来、これは舞台に立つ者すべてに当たり前のことなのだが、それさえできていない作品が多いということだ。同じ演劇人として、若い人々の一所懸命さに教えてもらうこともある。
ただ、この公演が、今後どこまで伸びるか、それは今後の勝負だろう。今回の舞台の成果が、第三弾としてさらに発展を遂げるのか、また別の形態を取るのか、そこに注目したい。