一幕の終わり、大きな見せ場でもある「階段落ち」に至るまでの立ち回りで、堂本光一のマイクから苦しそうな息切れが聞こえた。身体も上下に大きく波打っている。スピード感のある動きをあれだけ続けていれば当然だろう。その後、よろめく身体を刀で支えるようにしながら⒛数段の大階段を登り、そこから転がり落ちる。「身体を張った」とか「命懸けの」という言葉がもはや陳腐にも思え、彼はここまで自分を追い詰めて大丈夫なのだろうか、とさえ思う。これが今年で17年目を迎えた「Endless SHOCK 2016」の感想だ。

 しかし、彼は観客が求める以上、どんな想いをしてでもこの舞台を続けるのだろう。それこそが、彼の中での「Show must go on」なのだ。どんなにトレーニングを続け、厳しく自己管理をしていても歳月の経過は誰にも容赦なく降りかかる。それをどこまで食い止められるかは個人の意志と努力だ。彼は、この舞台を続けるために、日々をストイックに生きているのではないか、とさえ思う。

 堂本光一が演じるコウイチという名のエンターテイナーが、ライバルの屋良朝幸が演じるヤラとの確執・信頼などの感情を交錯させながらその人生を見せる、というストーリーは変わらない。劇場のオーナーに前田美波里が怪我を克服し、復帰した。彼女のダイナミックで厚みのある芝居や歌声が、この作品に大きく貢献していることは間違いのない事実だ。年功を積み、本当の意味でのショーを知っている役者が一人加わるだけで、その重量感が増す。他のメンバーも、屋良朝幸は言うに及ばず、周りを支える若手が大きく成長した印象がある。カンパニーの中心である堂本光一の姿が、彼らに刺激を与えていることは間違いない。

 このハードな舞台を17年間続ける、ということ自体が並大抵の技ではないが、この間に演劇界の「眼」が変わったことも大きな事実であり、改めて書いておく必要があるだろう。この芝居が始まった当初は、多くのスーパーアイドルを抱えるジャニーズ事務所の公演、ということで、他の芝居とは違った眼で見られていた。それが、回数を重ねるに従い、単純にアイドルが芝居をしているだけではなく、そのクオリティの高さや毎年の研鑽によるショーアップが評価されるに至った。その証拠が、2007年の「菊田一夫演劇大賞」の受賞だろう。私のような批評家を含めた第三者の眼から見て、「Endless SHOCK」が一つの作品として高い評価を持ち、賞に値するという結果が出たのだ。この大きな賞を20代で手にしながらも、それ以降10年に近い時間の歩みや姿勢を変えることがないのは、彼の軸がぶれない強さによるものだろう。ここまで来れば、楽をしようと思えばできないことはないが、その妥協が彼にはない。だからこそ、観客はこの舞台を支持するのだ。

 「しなやかな勁さ」は、彼の最も大きな魅力かもしれない。