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七月歌舞伎座 夜の部 『鬼平犯科帳』『蝶の道行』 2025.07.05 歌舞伎座 の劇評をアップしました!

演劇批評

七月歌舞伎座 夜の部 『鬼平犯科帳』『蝶の道行』 2025.07.05 歌舞伎座

 二世中村吉右衛門がテレビで人気を博し、28年間にわたって放送された『鬼平犯科帳』。キチンと作られた池波正太郎の原作があってこそだが、今月の歌舞伎座では、松本幸四郎が鬼平を演じている。実は、これは鬼平にとっては「里帰り」を果たしたようなもので、本来、この物語は、幸四郎の祖父・八世松本幸四郎(1910~1982)をモデルに書かれ、昭和44年から翌年にかけて放映されたものだ。その後、次男の吉右衛門、そして今回は八世の孫に当たる当代の幸四郎が演じている。

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演劇批評

「滝沢家の内乱」 2025.07.01 かめありリリオホール

 2011年の初演以来、今回が4演目となる『滝沢家の内乱』。『南総里見八犬伝』で名高い滝沢馬琴(1767~1848)が、この大長編を執筆中に目を患い執筆が不可能となり、息子の嫁・お路が口述筆記で残りを完成させた、というエピソードは有名だ。そこだけに焦点を当てるのではなく、滝沢馬琴がどのような環境の中で日々を過ごし、歴史に残る名作を書き上げたのか。そこに目を付けた劇作家の吉永仁郎(1929~2022)の佳作とも言える作品だ。馬琴と言えば、日本で初めて原稿料で生計を立てることができた文筆家など、エピソードには事欠かない人物だが、あえて「滝沢家」の内部のみに焦点を当てたところに、作者の劇作家としての優れた眼が光っている。

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