去年の9月30日に東京・立川で幕を開けた平幹二朗の『王女メディア』が、近畿・中国・四国・中部・北陸・東北・北海道の旅を経て、96ステージ目でこの水戸芸術館で千秋楽を迎えた。1月の上旬に東京グローブ座でも一週間ほどの公演を持ったが、2013年の「一世一代」が好評を受け、82歳にして「一世一代、ふたたび」と銘打って全国を巡演しているのは驚異的なことだ。 続きを読む
去年の9月30日に東京・立川で幕を開けた平幹二朗の『王女メディア』が、近畿・中国・四国・中部・北陸・東北・北海道の旅を経て、96ステージ目でこの水戸芸術館で千秋楽を迎えた。1月の上旬に東京グローブ座でも一週間ほどの公演を持ったが、2013年の「一世一代」が好評を受け、82歳にして「一世一代、ふたたび」と銘打って全国を巡演しているのは驚異的なことだ。 続きを読む
男性ばかりの劇団「Studio Life」の創立30周年記念公演の第5弾である。萩尾望都の『トーマの心臓』、『訪問者』、それに朗読劇『湖畔にて』の3作の連鎖公演と銘打ち、2月24日からそれぞれの作品を上演している。「訪問者」は『トーマの心臓』の前段と言うべき作品で、オスカーという少年がドイツの全寮制の学校へ入るまでの、少年時代の物語だ。そこで描かれるのは、オスカーの出生の秘密であり、両親の過去、母親の死の真相である。タイトルの「訪問者」とは、一体誰を指すのだろうか。父親のグスタフにおける子供のオスカーか、グスタフの旧友で、今は高校の校長になったルドルフに対するオスカーなのか。どう解釈するかは観てのお楽しみ、だろう。 続きを読む
一幕の終わり、大きな見せ場でもある「階段落ち」に至るまでの立ち回りで、堂本光一のマイクから苦しそうな息切れが聞こえた。身体も上下に大きく波打っている。スピード感のある動きをあれだけ続けていれば当然だろう。その後、よろめく身体を刀で支えるようにしながら⒛数段の大階段を登り、そこから転がり落ちる。「身体を張った」とか「命懸けの」という言葉がもはや陳腐にも思え、彼はここまで自分を追い詰めて大丈夫なのだろうか、とさえ思う。これが今年で17年目を迎えた「Endless SHOCK 2016」の感想だ。 続きを読む
ほとんどの場合、芝居のタイトルはその内容をある程度予想させるものだ。内容がわからないタイトルでは、観客の集客にも影響するし、観客も判断に困るからだ。しかし、美輪明宏へのオマージュである『MIWA』などのいくつかの例外を除いて、野田秀樹が創る芝居は、タイトルからではおよそ内容が予想できない。そればかりか、彼は観客に挑戦するかのように、プログラムにも、他の芝居のように「あらすじ」を載せていない。対談やコメントなどである程度の予想が付く場合もあるが、それもごく一部だ。
まるで、どこまで観客を裏切れるか、芝居の仕掛けに気付かせないようにするか、という「挑戦」を楽しんでいるかのようだ。 続きを読む
正月の歌舞伎座は、何とはなしに賑やかな風情が漂い、華やかな空気に包まれる。俳句の季語に「初芝居」とあるように、年が改まって華やか顔ぶれの役者と、賑やかな演目が揃うか
らだろう。今月も、ベテランから花形まで、多彩なメンバーで歌舞伎座の一年の幕が開いた。 続きを読む
「花より男子」
舞台もテレビも、漫画を原作にしたものが増えているのは昨今始まった風潮ではない。昨年も、『ワンピース』が歌舞伎化されて大きな話題になったのは周知の事実だ。この風潮を批判的な眼で眺める向きもあるが、私は、作品を厳選し、どう手を加えるかの問題に過ぎないと思っている。つまり、素材をどこに求めようと、出来上がった舞台の質が問題であり、その出来が悪かった時に、「原作が漫画では…」と言うのは卑怯な話だと考えている。ただ、芝居の制作現場において、すでに読者を多数獲得している実績のある漫画に頼りすぎるあまり、素材を吟味する作業がいささか疎かにされ、玉石混交になっている感があるのは否めない。 続きを読む
ギリシャ悲劇の『王女メディア』を1978年に平幹二朗が蜷川幸雄の演出、辻村寿三郎の衣装という異色の顔合わせで、日生劇場で初演をしてから38年が経った。その間、国内だけではなく、本国のギリシャはもとよりイタリア、フランス、アメリカ、カナダなどで上演を重ね、2012年には「一世一代」と銘打って全国各地50か所での公演を行った。しかし、その舞台が非常に優れていたために、昨年の9月、東京・立川を振り出しに、北海道から九州まで、今年の3月までかけて実に58か所で「一世一代、ふたたび」として12回目の公演を行っている。 続きを読む
師走の国立劇場で『東海道四谷怪談』を上演している。本来であれば、6月から9月辺りまでが「旬」のはずのこの作品を、なぜ真冬、それも暮れに、と思ったが、鶴屋南北がこの芝居を初演した時のことを想い出し、「暮れでなければ上演できない」方法での上演なのだ、と納得した。その関係をばらしてしまえば、「忠臣蔵」だ。歌舞伎の三大名作に数えられる『仮名手本忠臣蔵』をかなり意識した作者の南北は、登場人物のそれぞれに『忠臣蔵』との関わりを持たせたばかりではなく、初演の折は『四谷怪談』と『忠臣蔵』を交互に上演した記録がある。 続きを読む
「根岸庵」とは、俳人・正岡子規が東京での住まいとしていた場所で、「律」とは子規の妹のことだ。36歳で亡くなった子規とその家族、俳人の仲間を描いた小幡欣治の作品を、劇団民藝が上演している。この芝居は1998年に初演されたもので、その折は子規を伊藤孝雄、母・八重を北林谷栄、律を奈良岡朋子が演じ、作者はそれぞれの役者に「当て書き」をした形だった。今回は配役を一新し、丹野郁弓が演出して明治に燃え尽きた俳人と周りの人々の息遣いを炙り出した。 続きを読む
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今年の顔見世は、「十一世市川團十郎五十年祭」でもある。神道の信仰が篤かった市川團十郎家・成田屋の、現・市川海老蔵の祖父に当たる十一世團十郎が没して半世紀。その舞台に、海老蔵の長男「堀越勸玄」が初御目見得として2歳数か月で舞台に登場する『江戸花成田面影』で、歌舞伎座は一気に温かな空気に包まれる。子役として特定の役を演じるわけではないため、「初舞台」ではなく本名での初お目見得になるが、故人の曾孫に当たり、最も若い世代の歌舞伎役者の誕生に、ご馳走で花を添えている坂田藤十郎、片岡仁左衛門、尾上菊五郎、中村梅玉らのベテランも、完全に喰われた格好だ。この坊やが、これからどういう道を歩むのかは誰にも判らない。しかし、新たな可能性の誕生であることは間違いない。海老蔵も完全に「父親の目」で初お目見えの子息をサポートする様子が微笑ましい。 続きを読む
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