演劇批評

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『ウィズ~オズの魔法使い~』  2015.03.14  東京国際フォーラム

 私が劇評を書くに当たって常に意識し、書いていることだが、舞台の幕が開いて以降は、その評価のほとんどは役者が引き受けなくてはならない。演劇ファンが「○○が出るから」、「あの作品なら」という動機で劇場へ足を運ぶケースは多いが、「△△の脚本だから」ないしは「××の演出だから」という動機で芝居を観る割合はそれに比べて少ないだろう。もちろん、名前だけで観客を集めることができる脚本家や演出家もいる。しかし、割合は圧倒的に俳優が多く、その演技を生かすも殺すも脚本・演出次第だ。その結果、「今月の○○さんは良かった」、あるいは「期待したほどじゃなかった」という感想に別れるケースが多い。 続きを読む

「死の舞踏」  2015.02.20 博品館劇場

 朗読劇が花ざかりの昨今だが、成功の条件はシンプルだ。「脚本がしっかりしていること」「読み手が巧いこと」。この二つしかない。その代わりに、この二つがうまく組み合わさるケースはなかなかない。大道具や衣装の経費が節減でき、役者の人数も通常の舞台公演よりは少なくすむために、制作する側は楽に見えるが、舞台の幕が上がれば、役者は「逃げ場」がない。それだけに、よほどの練達の腕がないと、成果が出ない。条件がシンプルであればあるほどに、成功は難しくなる。 続きを読む

『Endless SHOCK 2015』  2015.02.05 帝国劇場

Endless SHOCK 2015

 2000年の初演以来、少しずつメンバーを変えながら、16年連続での帝国劇場公演である。その間、一貫して主役を演じ続けているのは堂本光一だ。ショーの世界を舞台にした和製ミュージカルで、ナンバーが定着したものもかなりある。「Show must go on」のテーマが作品を貫いており、その中でいろいろなエンタテインメントを見せる方式は変わっていない。 続きを読む

『志の輔らくご 2015』 2015.01.27 パルコ劇場

志の輔らくご 2015
2015.01.27 パルコ劇場

 立川志の輔がパルコ劇場で一ヶ月の独演会を初めて今年で10年目だと言う。「継続は力なり」とは言うが、一ヶ月同じ場所で、前座も使わずにたった一人での落語会を続けるのは並大抵ではない。 続きを読む

「一月歌舞伎座 昼の部」 2015.01.06 歌舞伎座

 お正月の歌舞伎座、昼の部は時代物の『金閣寺』で幕を開け、舞踊の『蜘蛛の拍子舞』、最後が世話物の『一本刀土俵入』と、濃厚なボリューム感のある舞台だ。

 『金閣寺』は天下を狙う大悪人の松永大膳が染五郎、軟禁されている雪姫が七之助、此下東吉が勘九郎、と若々しいメンバーで幕を開ける。染五郎の演じる大膳は歌舞伎では「国崩し」と呼ばれる悪人で、科白に重厚感があるのが良い。七之助の雪姫は可憐で美しいが、人妻の色気がまだ足りず、いかにも清楚なままなのが惜しい。勘九郎の東吉、科白のメリハリがよく爽やかに演じて見せる。歌舞伎とは同じ演目を違ったメンバーで繰り返し観るのが一つの醍醐味だが、こうしたメンバーで『金閣寺』を演じるのを観ていると、歌舞伎の世界が確実に世代交代を告げていることを改めて感じさせられる。 続きを読む

「義賢最期」 2014.12 歌舞伎座

 歌舞伎座の師走公演の昼の部、片岡愛之助が主役で『義賢最期』を演じている。言うまでもなく、テレビドラマで大ブレイクして以降、息つく暇もないほどの活躍ぶりを見せている愛之助だが、実は歌舞伎座で自分が主役として出し物を演じるのはこれが初めてのことになる。愛之助がテレビなどの子役を経て歌舞伎の世界の住人となったのは、昭和56年12月の京都・南座の恒例顔見世興行のことだ。この時、昭和の名優・十三世片岡仁左衛門の部屋子(普通の弟子とは違い、師匠自らが手元に置いて育てる弟子を指すケースが多い)として、片岡千代丸の名で初舞台を踏んだ。 続きを読む

「ヴェローナの二紳士」 2014.12.10 日生劇場

 シェイクスピアの作品群の中では、『ハムレット』や『マクベス』などのいわゆる「四大悲劇」に比べると、上演頻度ははるかに少ない。1971年にニューヨークで初演されたミュージカル版はトニー賞も受賞しており、それを日本風に味付けするために上演台本・演出・振付を宮本亜門が行っている。 続きを読む

「私のホストちゃん~血闘!福岡中洲編~」 2014.12.09 日本青年館

 ホストの世界を舞台にし、若手のイケメン俳優を集めた舞台は他にも例がないわけではない。それにしても、平日の昼間の公演でありながら、実によく入っている。約1300席の日本青年館の大ホールでの13回の公演がほとんど完売に近い状況であり、演劇不況の折、羨ましいと思う劇場や劇団は多いだろう。 続きを読む

「吉良ですが、なにか?」 2014.11.26 本多劇場

 伊東四朗の「生誕77周年記念」、つまり「喜寿のお祝い」の舞台である。脚本が三谷幸喜、演出が出演も兼ねるラサール石井、他に福田沙紀、馬渕英里可、瀬戸カトリーヌ、駿河太郎、伊東孝明、大竹浩一、阿南健治、戸田恵子。 続きを読む

『バリモア』 2014.11.15 シアタートラム

 今の若い映画ファンには、戦争中に亡くなった「ジョン・バリモア」という二枚目の映画スターがいたことを知る人は少ないかもしれない。映画が無声映画から「トーキー」と呼ばれる科白が聞こえる物に変わった時代を生きた映画俳優であり、シェイクスピアの作品を演じる舞台俳優でもあった。晩年は、若い頃からのアルコール依存症が悪化し、50歳を過ぎた頃からは「忘れられた人」になり、60歳で孤独と貧困のうちに生涯を閉じた役者だ。四回の結婚をしたものの、家庭には恵まれず、俳優としても恵まれた生涯ではなかった。 続きを読む

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