『演劇夜話』終了のお知らせ
2020年6月1日、「新型コロナウイルス」による「緊急事態宣言」が発令された中、演劇界は先の見通しが不透明なまま、再開は可能なのか、それはいつのかという不安の真っ只中にいました。
批評家である私の仕事は、批評すべき「舞台」の幕が開かないことには成立しません。これは他の分野の仕事でも同じでしょうが、多くの方々が同様の不安と恐怖を抱いていた時期です。
私は、「演劇人」の一人として、舞台が開かずとも、何かを「発信」することの重要性を感じ、教え子の俳優・佐藤俊彦といろいろな話題を取り上げ、演劇に関する「対話」を始めました。五回に一回は「スペシャル」と称し、動画をお届けする試みも行って来ましたが、8月辺りから徐々に劇場の幕も上がりはじめ、完全とは言えないまでも、舞台が再開されました。
その間に、「無観客上演での映像配信」などの新しい「見せ方」も登場し、コロナ禍をきっかけに演劇界も大きな変革の中にいます。
そうした新しい形式に演じる側も観客も慣れ始めた今、新しい形の一つの提案として、「無観客上演の配信」の形ではありますが、「進化する演劇」の創作を試みました。
今回お届けするのは、私の作・演出による『修羅恋黄泉錦絵』(しゅらのこいよみじのにしきえ)という、歌舞伎俳優が主人公の一人芝居です。時代は明治10年の監獄。歌舞伎でも時代劇もない、明治時代を扱った作品群を「新・古典劇」の名のもとに発掘、あるいは創作し、皆さんにご紹介することを今後の仕事の一つにできれば、と考えています。
「進化する演劇」とは、今回は「映像」での配信ですが、次回は状況を見て出演者を増やし、テーマを変えずに舞台での「一幕物」としての上演、その次は「二幕」という形式で、同じテーマの物語がバージョン・アップする仕組みです。
どこまで実現可能かどうかわかりませんが、少なくも今の形式での『演劇夜話』はその役目を果たしたものと考え、この「スペシャル」をもって最終回とさせていただきます。
ご愛読ありがとうございました。
中村 義裕
『修羅恋黄泉錦絵』URLはこちらです。